No.43 創価大学万葉国際寮『自然と調和したレンガ』
『創価大学万葉国際寮』レンガ採用について
平成20年に建築基準法の定期報告制度について見直しが実施され、特殊建築物の外装タイル等の劣化・損傷については「3年ごとの調査の際に、手の届く範囲を打診、その他を目視で検査し、異常があれば全面打診等により調査し、加えて竣工、外壁改修等から10年を経てから最初の調査の際に全面打診等により調査する」となった。
これにより、外壁タイルの建物が多く存在している創価大学では、維持費、改修費が膨れ上がった。
法改正以降の新築建物では、外壁にタイルではなく、別の仕上げ材を採用していた。
今回の学生寮でも、施主よりタイル仕上げ以外のもので行うよう指示があり、様々検討を行っていた。
しかしタイル独特の風合い、表情に代わるものがなかなか見つからず悩んでいたところ、レンガに出会った。
本計画のコンセプトの一つに「自然との調和、環境配慮」を掲げており、自然素材でありかつ、断熱性能を確保でき、建物の高寿命化も期待でき、そして外壁に貼るのではなく、積上げるレンガは、定期報告の全面打診の対象外となり、しかもタイルよりむしろ重厚感があり奥行きのある表情が出せるため、採用を決めた。
大学での施工実績がないこと、イニシャルコストがやや高いこと、レンガの吸水率の問題、焼きムラや色の巾の問題、その他にもたくさんの懸念事項があったが、施工事例を学び、工場にも足を運び、現場には大きなモックアップを作成したりと、レンガについて施主と共に学び、一つ一つ問題を解決していった。
レンガ特有の焼きムラ、色の巾は、好みが完全に分かれる。
大きなサンプルを用意し、目地詰めも行い、何度もそれを見て頂く事で、見慣れてきた。
(なじんできたのではないかと思う。)
完成して1年半が経つが、あの時の不安要素は全く消え去った。
緑に包まれた武蔵野の丘で、自然と調和した建物からは、賑やかな学生の声が聞こえてくる。
ここから将来、世界で活躍する人材が育ちゆく事を期待したい。
(株式会社創造社 第三設計部 中山 正一)
- 工事名:創価大学万葉国際寮
- 発注者:学校法人 創価大学
- 設計/監理:㈱創造社
- 施工:大成建設株式会社
- 場所:東京都八王子市丹木町一丁目 創価大学構内
- 構造:鉄筋コンクリート造 地下1階、地上5階
- 竣工:2017年3月
- レンガ施工:㈱日本陶業
- メーカー:岡本煉瓦㈱ 400m²
- 営業担当:西真慶 工事担当:岡庭匠理